もとみや青年会議所 第37代理事長

廣瀬英孝 ひろせひでたか

はじめに

 人は誰しも幸せになるためにこの世に生まれ、社会は人々の幸せの上に成り立っている。

 誰かの不幸せの上に成り立っている社会は不健全であり、そこに明るい未来はありません。これは組織においても同様です。一人ひとりの輝く個性が調和することで明るい未来を描くことができ、一人ひとりが躍動することで自己の発展と成長に繋がり、それが幸せに生きるための原動力となるのです。

JCIMissionには、「“To provide development opportunities that empower young people to create positive change.” 青年会議所は、青年が社会により良い変化をもたらすための発展と成長の機会を提供する」とあります。裏を返せば社会により良い変化をもたらすためには、まずは自己の発展と成長が必要不可欠ということです。私たち青年会議所のメンバーは、それぞれが仕事や家庭で過ごす時間を割き、直接的な見返りを求めず、奉仕の心で地域や社会を豊かにしようと活動しています。この尊い活動の中でこそ、自らを律し、他者への思いやりの精神が育まれ、自己の成長に繋げることができるのだと感じます。自己の成長が幸せに生きるための原動力となり、隣人そして地域への無償の愛が幸せを未来へ繋ぐと確信しております。そこで2023年度のスローガンを「『幸せを未来へ繋ぐ』現代
(いま)を駆けよう同志(なかま)たちと共に」とさせていただきました。同志(なかま)たちと幸せも喜びも悲しみも悔しさも、すべて分かち合いながら、地域のそして日本の未来のため、共に現代(いま)を駆け抜けましょう。

 「あなたに夢はありますか?あるならば、その夢を実現しようと行動に移していますか」

 最近、夢について考える機会をいただきました。自分の夢を真剣に考えたのはいつ以来でしょうか。子供の頃、自分は何者にでもなれると信じて疑わず、大人になった今考えると無謀にも思える夢を当時描いていた記憶があります。その夢は歳を取るにつれて妥協しながら形を変え、現実的で無難な方向にシフトし、周囲の環境に流されるままに生きてきたような気がします。皆さんも少なからず私と似たような経験をお持ちなのではないでしょうか。
青年会議所の活動においてもこれは同様です。無難に実現可能なものや、リスクが低く失敗しにくいものを選択したり、大変だし忙しいからと本来必要な手順を省略したりしていませんか。
 「自分の会社で起きたら大変なことになる失敗も、JCの活動内では許されることが多い。40歳までに失敗した経験をたくさん積んだ方が良い。それが40歳を過ぎてからの人生に必ず活きてくるから。」
 これはある先輩が、JCに入会して間もない私に対して語った言葉です。失敗を恐れず、より良い地域の未来のため、仲間同士で夢を真剣に語り合い、それを現実のものとするため、共に挑戦してまいりましょう。例えそれが失敗に終わることがあったとしても、夢に挑戦する姿勢は、かならず次の世代へと受け継がれます。それが隣人愛、地域愛を未来へ繋ぐ一助となるはずです。

自己成長と 幸せを 育む 組織づくり

 青年会議所の活動は20歳から40歳までと制限がありますが、その20代30代は人生において一番精力的に活動できる年代でもあります。その時期に、どのようなことを経験し、学び、感動し、そして自分自身により良い変化を生じさせられるかが重要であると考えます。

 前述した通り、JCIMissionには、「青年が社会により良い変化をもたらすための発展と成長の機会を提供する」とあります。私たちがJC活動をしていく中で、本当に様々な機会が巡ってきます。その機会が巡ってきたとき、自分には難しいと感じたり自分には無理だ、合わないと感じたりすることがあるかもしれません。そんな時、最初からやらないのではなく、ひとまずやって経験してみてください。今の自分に出来ないことでも、経験し出来るようになれば良いのです。経験しそれでも自分には合わないと感じたらやめれば良いのです。その行動は必ず自己の発展と成長に繋がります。そして自己の成長こそが「幸せ」に生きるための原動力となるのです。

 では、「幸せ」とはなんでしょうか。幸せの定義を調べてみると、「心が満ち足りていること、その人にとって望ましいことが起こり、運が良いこと」とあります。幸せを感じる瞬間は人それぞれの価値観によって異なりますが、まずは自分の幸せを見つけることこそが重要です。幸福学を研究している慶応義塾大学大学院教授の前野隆司氏によると、幸せのメカニズムには「自己実現と成長」「つながりと感謝」「前向きと楽観」「独立とマイペース」の因子があり、それらを意識することが大切であると述べています。すなわち幸せを得るためには、私たち一人ひとりが常に自己実現と成長を繰り返しながら、家族や周囲の人々とのつながりに感謝を忘れず、前向きで独立した行動をしていかなければなりません。JAYCEEである私たちなら必ずできます。

 近年、SDGsや脱炭素など、地球規模の観点から未来を考える運動が世界共通の目標として取り組まれております。これは、環境を省みない経済や産業の急速な発展と、個人規模の便利さや豊かさを享受し続け、他者を省みない行動をしていたつけを、私たちの子孫に支払わせないためにも本気で取り組む必要があると考えます。日本では2020年10月に2050年カーボンニュートラルを目指すことを宣言しました。これを受け、本宮市でも2021年3月に「ゼロカーボンシティ」を宣言し、2050年CO2排出量実質ゼロへの歩みを進めるため、2022年には本宮に国内初の水素ステーションを2024年までに整備する計画が発表されるなど、本気で取り組んでいます。私たち青年会議所の組織運営においても、会議のペーパーレス化やWEB会議を導入することで移動に伴う排出ガスの削減など、環境に配慮した取り組みを実践してまいります。持続可能な社会の実現に向けて、企業や組織の努力は勿論のこと、個人個人の小さな積み重ねが、環境問題を解決する大きな一歩に繋がると信じています。

隣人愛を未来へ繋ぐひとづくり

 2022年2月24日、ロシアによるウクライナ侵攻が開始された。この事実は私たち世代の日本人にとって、戦争を身近に感じる衝撃的な出来事でした。そして、あからさまな武力行使による侵略行為で、大勢の子供や一般市民の尊い命が犠牲になり、大勢の人の生活と未来が侵害されました。このような戦争が繰り返し起こる根本的な原因は、今も根強く残っている人種間の差別や偏見であり、自国の利益のためなら他国を侵略し奪っても良いという身勝手な考え方によるものではないでしょうか。私たち一人ひとりが隣人を思いやる心を大切にし、時に問題が生じた場合は人と人が真摯に向き合い解決していければ、争いは無くなるのではないでしょうか。まずはあなたの隣人と愛をもって接してみてください。その隣人愛を地域に広げ、未来へ繋げるのが私たちの使命です。

 人と人を繋ぎ国際的なネットワークを牽引する、これは国際青年会議所(JCI)が担うべき役目です。そして、私たちJCIもとみやが担うべきは、地域住民一人ひとりの心を育むひとづくり事業であり、未来を担う子供たちが安心して夢を追い掛けられる環境をつくることだと考えます。子供たち一人ひとりの夢を大切にし、夢を久しく忘れてしまった私たち大人も「どうせ無理」と諦めるのではなく、できる方法を子供たちと一緒に考えてみませんか。人は夢を追い掛け、少しずつでも実現していくことで自信を生みます。その自信が幸せに生きる糧となり、自らの心を育みます。一人ひとりが心を育むことで、はじめて隣人に愛を注ぎ、地域に広げることができるのです。

 2019年に策定された「本宮市第2次総合計画」には、『笑顔』あふれる『人』と『地域』が輝くまちを目指すとあります。この計画を策定する際に行われた高校生への意識調査によると、生活の心配ごとは、「進学について(進学先や受験等)」が44.2%と最も多く、以下、「就職について(就職先や面接等)」(35.6%)、「学校の授業や自分の成績」(26.9%)、「進学にあたっての費用」(21.2%)となっており、進学や就職に関して、多くの心配ごとを抱えていることが分かります。このことからも、人生の岐路に立つ学生への進学や就労についての支援は特に必要不可欠であると感じます。

地域愛を未来へ繋ぐまちづくり

 2020年、新型コロナウイルス感染症によるパンデミックにより、企業活動や私生活において様々な規制が行われ、私たちのJC活動にも多大な影響を及ぼしました。私たちはこの不自由な生活の中でも、新しい幸せを掴み取ろうという一心で、JC活動を推し進めてまいりました。そして2022年、本宮市の英国庭園と姉妹庭園である英国ロンドンの福島庭園が、開園10周年を迎えることから、英国で記念式典が行われ、本宮市からも式典に出席するなど、直接的な国際交流も再開されました。そんななか2023年は、これまでの3年間で培ったノウハウを活かしながらも、そこからさらに一歩踏み出し、次のフェイズへ移行する時期に差し掛かっていると感じています。今こそ、地域のオピニオンリーダーであるJAYCEEの力が必要です。私たちで地域の魅力を存分に発信し、地域愛を未来へ繋げられるような事業を展開してまいりましょう。

 地域の魅力を発信するために、まずは、私たちがそれについて知る必要があります。前述の「本宮市第2次総合計画」策定の際に、本宮市が行った中学生と高校生に対する意識調査によると、本宮市の魅力は、「季節のお祭りやイベントなどが豊富である」「山、川などの自然環境に恵まれている」が5割前後を占め、上位となっています。また、大玉村は安達太良山から広がる田園地帯の中に「いぐね(防風林)」が点在する里山風景は村のシンボルとなっており、「日本で最も美しい村」連合にも加盟をしているなど、自然が豊かなことで知られています。これらのことから、「もとみや」の魅力を発信するうえで、自然やお祭りなど昔ながらの風習が密接に関わっているといえます。そして、その魅力を未来へ繋ぐために必要なことは、地域ぐるみで子供たちを育て地域愛を醸成することです。持続可能で魅力溢れる本宮市、大玉村を創生するため、子供たちの未来のため、そして地域愛を未来へ繋ぐため、共に励みましょう。

意識を変革し行動できる会員の育成・拡大

 2022年度、JCIもとみやの期首会員数は14名でスタートし、2022年11月までに14名の新入会員を迎え、会員数も28名まで増加しました。これもひとえに、会員一人ひとりが日頃からJCの活動を対外に発信し続け、JCの意義や理念に賛同する仲間を発掘し続けてきた成果であると実感しています。今後も会員拡大を継続していくことが、持続可能な組織をつくる上で必要不可欠なのは言うまでもありません。私たちの理念に賛同する人材を集めることでJCのスケールメリットを拡充し、一人ひとりの意識を変革し行動できる人財に育成することで初めて社会により良い変化をもたらすことができるのです。

 私がJCに入会して現在まで、様々な出会いに恵まれました。こんなに地域のことを真剣に考え、明るい豊かな社会の実現のために自らの時間とお金を使って活動している人たちがいるのか、こんなに魅力的な人たちが同世代にいるのか、と感銘を受ける出会いがたくさんありました。そして私自身、多くの機会をいただき、先輩たちから教えを授かり、その背中を追い掛けながら真剣にJC活動に取り組むうちに、私の意識も少しずつ変わっていきました。「意識が変われば、態度が変わる。態度が変われば、行動が変わる。行動が変われば、習慣が変わる。習慣が変われば、人格が変わる。人格が変われば、運命が変わる。運命が変われば、人生が変わる。」これは私の好きな言葉で、ヒンズー教の教えの一節です。私なりに要約すると、まずは意識を変えることが、人生を変える第一歩であるということです。そして自分の人生を変えた先で、はじめて他人の人生に変化を生じさせることができるのだと思います。まずは私たちが変わりましょう。意識の変革団体といわれているJCでなら、それができます。

結びに

 現在のJCIもとみやの価値は、これまでに先輩方が培ってこられた結果によるものです。私たちには、創始の志を次の世代へ繋げる責任があります。そして、未来のJCIもとみやの価値は、私たちの手で創造していかなくてはなりません。

 JCは「明るい豊かな社会」の実現を目指して運動をおこなっている団体です。その「明るい豊かな社会」の定義は時代と共に変化してきました。例えば昭和の時代は、テレビ、洗濯機、冷蔵庫の「三種の神器」をはじめ、物が幸せの象徴でした。しかし年号が令和に変わった現代においては、不要な物を減らし生活に調和をもたらそうとする断捨離という思想が流行するなど物が溢れ、人と繋がるのにはオンラインが当たり前、SNSのフォロワー数や「いいね」の数など形のないものが幸せの象徴として取沙汰されています。

 幸せとはなんなのか、私たちはしっかりと見極める必要があるのかもしれません。そのうえで「明るい豊かな社会」を定義し、その実現に向けて活動してまいりましょう。すべては地域のため、未来ある子供たちのため、私たちの無償の愛が幸せを未来へ繋ぐと信じて。

 最後に、私と活動を共にしていただけるメンバーの皆様に感謝の意を表します。一年間よろしくお願いいたします。

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